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わたくし、これから暴れます。in Russia


ロシア留学生の日常
by glbee

ことばとゆめとじぶん

他言語を勉強していると、しばしばパラダイムシフトが起こる。
ある日突然、テレビから流れてくる言葉が自分の中で意味を成したり、気がついたら人と何気なくコミュニケーションをとれていたり。

かく言う俺もこれを体験した。
1度目は6年前、アメリカで。


6年前の話をしよう。
6年前、俺は夢を見つけた。

アメリカはワシントン州のウィルトンという田舎町にホームステイした。
当時の俺は中3。
完了形を習ったか習ってないかで、使役動詞はおろか、仮定法、時制など全く知らない。
しかし、俺は英語には自信があったし、意気揚々と出発したのを覚えている。

到着して、初日ファームステイ先に滞在することに。
そこは、老夫婦が経営する農場で、養子をたくさんもらっていた。
みんな俺と同じくらいか、それより下か。
その中に、アレックスというタメの奴がいて、最初から何気なく一緒に行動するようになった。
しかし、最初は奴のいうことが全く分からなかった。

必死で伝えようとするアレックスを前に、俺は辞書を片手に一生懸命理解しようと試みたが、
次第にアレックスの顔がこわばり、困り果てていくのが手に取るように分かった。
こんなことも分からないの。
と言っているように。
俺はショックだった。

2日目、時差のせいで、早朝に起きた俺は外に出た。
アメリカの田舎の朝は、馬鹿にきれいだ。
眼下に林檎畑が広がり、遠くには小高い山々がそびえ立つ。
芝の青さと湖の群青色、そして空の透き通った水色。
その環境を静かに楽しむアレックスがいた。
農場の子供は早起きだ。朝飯までの時間、一人でギターを練習していた。
隣に座り、それを聞きながら、ぽちぽちと話し始める。
最初はgood morningから。
そのうち、アレックスは自分の気分、何が好きで、何をしたいかなんかを話し、
俺も似たようなことを話した。
ちぐはぐで、ぐちゃぐちゃの英語だけど一生懸命伝えた。今度は辞書なんかなしで。
何故か、アレックスの言っていること、言いたいことがすぐに分かった。

その日から、俺は英語を話せるようになった。

もちろん、分からない単語に遭遇したり、テレビをみてて分からないことがあったり
そんなことは当たり前のようにあった。
でも、その都度、その意味を聞き、理解し、学習できた。
英語を教科書や授業からじゃなく、生活から吸収していった。


あのときの高揚はたとえようもない。
それは、自分の可能性が開けた瞬間だ。
世界に驚き、言葉に驚き、自分に驚いた。

そして、留学したいという夢を抱いた。
世界を見たいとか、文化を感じたいとか、違う人間と触れ合いたいとか、
そんな明確なものが理由じゃない。
俺はただ単に、俺がもっと満足して生きていたいだけだ。
たくさんの感動を覚えて、多くの驚きをもらって、自分を誇れる人になりたい。
そう思った。


野望を抱いた14の頃。
6年経て、俺はその第一歩を踏み出しているのだと思う。
by glbee | 2010-10-13 05:00 |
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